イチョウウキゴケの扱いについて、環境省と1999年の千葉県はほぼ同列歩調であった。
しかし、2004年の千葉県レッドリストでは、明らかにトーンダウンしていることが気がかりである。
☆
★歴史は繰り返す
雄蛇ケ池における水生植物帯の激減状態は、1978年から1980年にかけても発生し、国井(1984)が詳細を報告している(※05・英文)。
雄蛇ケ池の水生植物は、1979年05月07月09月にほぼ全面的に水面を覆っており、その概略は東半分にヒシtrapa、西半分にハスnelumbo、であった(※05
Fig.11)。
しかし、1980年05月は中央部を主に約70%が消失し、09月はさらに拡大し約80%が消滅している(※05 Fig.11)。
その原因を国井(1984)は、
「the considerable reduction of surface cover in 1980 occurred
as a result of winter drawdown and unfavorable summer weather
occurred at that time and/or the introduction of the grass carps.」と述べている。
要訳すれば、「(水面を覆っていた水生植物の)1980年の縮小は、冬季(1980年01〜02月)水抜き・水位低下の結果及び、好ましからぬ夏の天候に加えて(または)草魚の導入により起こった」となろう。
慎重な表現を大胆な表現に変更し、短刀直入に言うことが許されるなら「ソウギョを放流し、水生植物帯の約80%を1年で消滅させた」ことに他ならない。
☆
★再び草食魚ソウギョの放流と絶滅危惧U類ガガブタの減少
雄蛇ケ池では、2006年02月に藻の繁茂防止を目的に、再び、草食魚ソウギョ(※06・07・08)が放流された。
2007年春季・夏季・秋季までに、ソウギョ放流以前に繁茂していた、マツモ・オオカナダモ・ヒシ・ガガブタ・等の沈水植物帯・浮葉植物帯の水生植物が壊滅・減少状態になり、次第に抽水植物帯のマコモ・ヨシ等の新芽も食害されている(※09)。
水生植物帯の激減状態にともない、底泥の巻上げによる栄養塩の再溶出に起因した植物プランクトン(藍藻類)の大繁殖も懸念される。
浮葉植物では、環境省のレッドデータブックで「絶滅危惧U類・VU」とされ、2004年の千葉県レッドリストで「C 要保護生物」に指定されたガガブタも、雄蛇ケ池において既に減少状態にある。
水生植物帯受難の歴史は繰り返した、再び同じ道を行きつつある。
先の国井(1984)報告の1980年当時の様相が、2007年の雄蛇ケ池に心ならずも再現されている。
ソウギョ放流以前の2003年09月25日及びソウギョ放流後の2008年03月26日の、ガガブタ生息ポイントの変化状況を、Fig.05-06に示す。
fig.05 ガガブタ群落(2003年09月25日)
fig.06 ガガブタは減少状態(2008年03月26日)
☆
★雄蛇ケ池の未来に向けて
1980年の事例・ガガブタの事例・及びそれらの含意から、イチョウウキゴケに対するソウギョの食害も危惧されるという、新たな特有事情が雄蛇ケ池に生じた。
上述した事実を踏まえ、千葉県は、貴重種水生植物の継続的脅威となり得る人為的原因排除の指導をすべきではなかろうか。
遅きに失した感は否めないものの、継続的脅威を断ち切り、影響度を低下させることは、有意であろう。
本調査では、雄蛇ケ池の一部湖岸の探索を実施したが、全湖岸における現存イチョウウキゴケの探索をはじめ、他の絶滅危惧種の探索は、今後検討する必要があろう。
☆
【謝辞 ACKNOWLEDGMENTS】
本調査を実施するに当たり、雄蛇ケ池におけるイチョウウキゴケ現存の情報を頂いた、ホームページ「雄蛇ケ池バスフィッシングガイド」(※09)主宰者つかじー(ハンドルネーム)さんに、お礼を申し上げる。
また、神奈川県水産技術センター内水面試験場利波之徳氏には文献閲覧の利便を与えて頂き、心より感謝します。
☆
【参考文献 REFERENCES】
(※01)環境省(2008):環境省自然環境局生物多様性センター
(※02)「ザ・レイクチャンプ」「シークレット・ポイント0001雄蛇ケ池」
(※03)千葉県(1999):千葉県レッドデータブック(植物編),
(※04)千葉県(2004):千葉県レッドリスト,
(※05)Hidenobu KuNiI(1984):Seasonal Changes in Water Quality
and Surface Cover of Aquatic Plants in Pond Ojaga-ike, Chiba,
1978-1980. Memoirs of The Faculty of Science, Shimane University,
18, pp.59-68,
暫定和訳:国井秀伸(1984):1978年から1980年における千葉県雄蛇ケ池の水質と植被の季節変化.島根大学理学部紀要(18)pp.67.
(※06)土屋 実・中村一雄・船坂義郎・寺尾俊郎・粟倉輝彦(1970):草魚・連魚.草魚・姫鱒他.緑書房,東京,pp.11−89.
(※07)● 作組(1983):草魚.中国薬用動物志.天津科学技術出版社,天津・中国,pp.203−205.(姓は十偏にソウ=刀の両脇にハネ点)
(※08)牟田邦甫(1986):ソウギョ関係研究文献解題.水産庁東海区水産研究所陸水部pp.01−76.
(※09)「雄蛇ケ池バスフィッシングガイド」
(※10)大滝末男・石戸 忠(1980):イチョウウキゴケ.日本水生植物図鑑.北隆館,東京,pp.278−279.